Q、コーディネートのアイディアはどこからくるのですか?
スローエイジング編集部発足のスタディーセッション。これまでスローエイジングサイトで掲載してきた記事を、専門家の先生をお呼びして検証していきます。今回は雑誌や広告でご活躍中の人気スタイリスト入江未悠さんをお呼びして、スローエイジング世代のスタイリングのコツや、整理整頓のコツをお聞きしました。
●入江未悠: 青山学院大学卒業後、「CanCam」でライター&スタイリストアシスタントとして編集業務に携わり、2003年にスタイリストとして独立。
現在は「Oggi」「Story」など女性ファッション誌を中心に活躍中。
2012年、整理収納アドバイザー資格を取得。
Q、コーディネートのアイディアはどこからくるのですか?
●入江:私は普段女性ファッション誌のスタイリングをすることが多いのですが、雑誌だと毎月プラン会議があって企画内容が決まっていくので、季節やTPOなど、その号のテーマに合わせてアイディアを出していきます。
ファッションのトレンドだけではなく、企画に応じて必要な要素を入れ込んでいくイメージです。
●編集部:それは企画ありきということですよね。
●入江:雑誌ではそうですね。企画が決まった段階で、まずは担当編集者、担当ライターさんと担当スタイリストが集まって、ざっくばらんにアイディアを出し合います。
ライターさんはトレンドに敏感な方が多く、読者モデルさんやインスタグラマーさんなど常に色々な方に取材をしてリアルな意見を集めてきてくれます。それらを参考にしながら、スタイリストである私は一日にだいたい10件以上プレスルームをまわってリースをします。
そこでプレスの方とお話する時間は大事なコミュニケーション。
最新のトレンドを自分なりに把握しながら、企画にいちばん合う物を提案していくという流れです。
●(40代A):一日に10件も行かれて、それらのアイテムをどうやって覚えているのですか?
●入江:スマホで写真を撮って画像を保存し、のちに整理して、ブランド別・アイテム別に、わかりやすいようにファイリングして保存しています。
●(40代A):画像が頭に入っている感じですか?
●入江:そうですね。誰かになにか聞かれた時にすぐに答えられるように、なるべくいつも更新できている状態にしておくように心がけています。
●(40代A):一般人は、空間も頭の中も整理されていない状態というのがほとんどですけど。笑
●編集部:あれ?こんなのあったっけ?みたいなことが多いですね。忘れちゃうんですよね。
●入江:仕事場のコーディネートルームも、常に整理整頓されていないと落ち着かないですね。視界に入った時に、雑然としていたら、頭の中もごちゃごちゃになってしまう気がします。
※コーディネートルーム:借りてきた洋服を一時的に保管する部屋のこと。
私はアイテム別、色別、素材別など、規則性を作ってカテゴライズをしています。
例えば、アウターであれば丈の長い順から並べるなど、ぱっと見てすぐ分かる状態になっているのがベストです。
●編集部:雑誌や広告などはテーマがありますが、例えばパーソナルスタイリストをするときは、どんなことに注意されますか?
●入江:まずはその人の職業やTPOを理解する事でしょうか。どんなシーンで、どこに行く事が多いか。それから、その方の身長や全体的なバランスを見ます。
●(40代A):背が高い、低いで似合うもの、似合わないものというのはありますか?
●入江:例えば柄物でしたら、背が高い方はどちらかというと大きめの柄を選ぶとよいと思います。同じストライプでも太め幅のものの方がお似合いになると思います。
逆に背があまり高くない方は、小花柄と呼ばれる小さなフラワープリントや、細かいドット柄などがおすすめですね。
それでも、華奢な方が大柄を着たい日もありますよね。そういう時は、トップスではなく顔から離れたスカートやパンツで取り入れる方が良いと思います。
また、身長問わず、全身のバランスを良く見せたい時は、ハイウエストボトムを選んで、ウエスト位置を高く見せるようにすると、スタイルアップに繋がります。
最近はカジュアル流行で、ヒールのない靴やスニーカースタイルが主流ですよね。その際もウエスト位置が高めに見えるボトムスを選ぶと、ヒールを履かなくてもスタイル良く見せることができます。
●編集部:視覚効果ですね。
●入江:そうですね。視覚効果を利用する意味では、もう一つ。最近ラップスカートやラップパンツが流行っているのですが、これらのボトムスは斜めにラインが入っているので、目の錯覚で下半身をスッキリみせてくれる効果があります。
前後の長さが違うバックロングスカートや、左右違うデザインのアシンメトリースカートを取り入れるのもオススメです。
スタイルよく見せる事を意識してつくる着こなしシルエットというのがあります。
王道は、トップスもボトムスもタイトなラインでまとめるIライン。もうひとつはふんわり×ふんわりで作るXラインです。
例えば袖にボリュームがあるブラウスを、フレアースカートにインする着こなしです。ウエストマークする事によって、スタイルが良く見えます。
●編集部:スタイリストをされていると、色々な体型の方に合わせてスタイリングされると思うのですが、痩せ過ぎていている体型の方には?
●入江:痩せているのが気になる場合は、露出を少なくしたり、体のシルエットがあまり目立たないように、ハリのある素材の洋服を選びます。
●(20代E) :年齢によって首回りを綺麗に見せるコツはありますか?
●入江:Vネック、クルーネック、ボートネックなど、トップスの襟ぐりのデザインは色々ありますが、まずは自分に似合う開きを知ると良いと思います。
●編集部:私はもうすぐ40歳になるのですが、最近手持ちの洋服が急に似合わなくなってきたというか・・・。お気に入りだった物がしっくりこなくなってしまいました。スカートの丈なども膝を出したら何だか若作りしているように見えるのではと思ってしまって。
入江:私もそれは感じた事があります。20代の後半に好んで着ていた洋服も、数年後に久しぶりに袖を通してみたら、似合っていない感じがして驚きました。
トレンドの流れも影響しているとは思います。流行は巡ってくるものなので、ぐるっと回ってまた着られることもありますからね。
●(40代A):ぐるっと回ってまた着られたという例はありますか?
●入江:最近のボトムスは、ひざ下丈のもの・ワイドシルエットのものが主流ですが、数シーズンそれが続いているので、だんだんそれがマンネリ化してくると、ショート丈ボトムスの流行が巡ってくると思います。
定番こそ更新していく
●編集部:定番と言われるものは数年経っても着られますか?
●入江:定番と言われる白シャツやデニムこそ、実は更新することが大事だと思います。以前のシャツはメンズライクな素材で、肩の位置はジャスト、きりりと着るイメージでしたが、いまは柔らかい素材で、ドロップショルダー・背抜きで着るものが主流ですね。
日常的にシャツを着る方なら、シーズンに一着、シャツを買い足すことでマイベーシックが更新できます。
旬なシャツを1枚持っているだけで、ベーシックなボトムスを合わせるだけで今っぽい着こなしになりますし、トレンドの小物を足すことでさらに素敵なスタイルになると思います。
●編集部:いつも同じ様なファッションになりがちで、たまには違うテイストの洋服にチャレンジしたいのですが、何が似合うのか分かりません。
●入江:新しいアイテムに挑戦するとき、自分ひとりだけではジャッジが難しいですよね。
私の場合は、自分のテイストに合っていると感じるお気に入りのショップ店員さんに、試着の際に色々と聞いてみたりします。馴染みのショップ店員さんの意見って結構参考になったりしますからね。
外から見て気付かない部分を店員さんが指摘してくれたり、新しい発見がありますよ。
スタメンラックを作る
●編集部:整理するコツってありますか?
●入江:私のおすすめは、『スタメンラック』を作ることです。
1年の中で春夏秋冬があって、3月、6月、9月、12月と見直すタイミングの月を作っています。例えば、ワードローブが沢山あってごちゃごちゃしているのであれば、いまから3ヶ月活躍させたいと思うアイテムを10着セレクトしてみます。
お気に入りのトップスの中で、常に手に取るものを1軍と考えます。
ボトムスなら、このパンツは履き心地がいいし、シルエットも今の気分だし、、スカートだったらどれかな?という感じでセレクトしていきます。
春のアウターなら、トレンチ?ライダース? とにかく10着選んで、それをラックなど一カ所にまとめてみます。
そうすると、いま何が足りないということが見えてきます。
そして、たまに2軍と見比べてみて、気分や季節感で入れ替えて、補充していくと言った感じにしています。
靴のセレクトでも同じように考えます。
履き心地やデザインが気に入っていて、毎日履きたいと思う靴に合わせるボトムスは何だろう?と考えていますね。
トップスなどの洋服からスタイリングをしがちですが、靴をメインにして着こなしを考えていくと発想もまた新しくなります。
Q,バッグの収納に困っています。
●入江:バックは、形やサイズもバラバラですよね。そして、色々な用途のバッグがあります。たくさん荷物を収納できるトートバッグとか、お休みの日に斜めがけして両手があく小さめショルダーバッグとか。
私の場合は、バックを置いた時に自立しないバッグは、ブックスタンドを使って収納します。もしくは、S字フックを使ってラックにお洋服と一緒に吊るして収納するのも良いですね。しまい込むのではなく、見える状態で保管することが重要で、自分の中でもきちんと整理できます。
私は、クローゼットを頭の中で3カ所に分類します。
まずは中段の収納を考えます。一番手が届きやすので頻繁に使うものを収納します。その次に使う物は下段に、ほとんど使わないものは上段に収納するようにします。
季節物や冠婚葬祭、1年に1回出番があるようなものは、普段手の届かない上段にしまうとそれだけでかなりスッキリするはずです。
このときに必ず気を付けてほしいのが、湿気対策を行っていただくことです。
日本は多湿ですが、ヨーロッパのハイブランドのバッグなどは日本の気候に合わせて作られていません。
大事に保管をしていたはずなのに、いざ出してみたらカビだらけ…なんてこともあり得ますので、必ず湿気対策を行って収納保管して下さい。
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