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女性僧侶「山口依乗」が説く、『聞くということ』。

都会の駆け込み寺『寺カフェ代官山』。仏様の智慧をヒントに共に悩み、語ることで心の安らぎを共にしたいと願う、お坊さんのお話をお届けします。今回は女性僧侶“依乗先生“が説く『聞くということ』。みなさんはひとの話しを本当に聞いていますか?

よく聴きなさい


お釈迦さまのお弟子にアナンさんという方がおられました。

アナンさんはお釈迦様の従者でした。今でいうと秘書さんです。 いつも身近にいてお世話をしておりました。

ですからお釈迦様の説法を1番よく聞いていたひと、『多聞第一のアナン』といわれています。

ある時、その日アナンさんが見たお釈迦様の姿があまりにも清らかなのでびっくりいたします。

清らかな浄らかなお姿の師よと褒め称えます。

「私はかつてお師匠様から過去・現在・未来の仏樣方は仏と仏が常に思い合っておられるとお聞きいたしましたが、今日の特別に清らかなお姿で念じておられる仏様とは、どのような仏様なのですか?」

お釈迦様の説法の座には、たくさんの人々が集まっておられました。 その大衆が皆悟りを開いていた、すでに平安を得ていたと書かれています。

(いまだ修行することが残っている、アナン一人を除いて・・・。) と但し書きがありました。

ですから、お釈迦様は「ああ、やっとアナンが気づいてくれた」と喜ばれますが、 「誰かに教えられて問うているのではありませんか?」といったんは問いを退けます。

「いいえ、私自身が今日本当にお師匠様が仏陀であると目が覚めたのです、ですからお尋ねしているのです」とアナンは答えます。

それでお釈迦様は、「善いかなアナン、あなたの問は大切な問です。一切の未来の衆生(しゅじょう)を利益することでしょう。 アナンよ、よく聴きなさい。 今汝がために、あなたのために説きましょう」と。

「はい、お師匠様かしこまりました」とアナンは答えました。

以上は、【仏説無量寿経】という経典の冒頭に書かれています。


身近な人が一番その人の言葉を聞いていない、聞いているつもりで聞けていないというお喩えだなぁと思います。


アナンさんは結局、釈迦入滅後にお悟りを開くことになるのですが、無仏の世(現代)に梵夫であるこの私がさとりを開く道を代表して問うて下さったのでしょう。「よく聴きなさい。あなた一人のために説きます」と言われたら、

「ハイ、かしこまりました」しかないのですが、

「でも」とか「だけどぉ〜」とか、「もう解ったからっ!」とか言っちゃうんですよねぇ。※親鸞聖人は『唯信鈔文意』に“慣れたる心“といわれ、「解ったことにしいる」と指摘されています。

ひとの言葉を純粋にその心になってきくのは難しいのです。


山口依乗 やまぐちえじょう

北海道帯広市出身。 胎教からお念仏に育まれ、熱心な門徒であった両親の影響で念仏者となる。 27歳から心理カウンセラー・音楽療法士として奉仕活動を続けている。 浄土真宗本願寺派布教使。



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